概要
コロナショックの衝撃は現在進行形で打撃を与えている。コロナ禍による金融危機が起きれば1929年以来の世界大恐慌となる。アフターコロナの国際経済、日本経済を透視する本書である。その中でも今回はCLOについて触れていく。
原油価格マイナス
コロナショックが世界経済に暗い影を落とす中、原油価格が異常事態に見舞われた。
4月20日ニューヨーク・マーカンタイル商品取引所の原油先物価格が前日比55.90ドル安の1バレル=マイナス37.63ドルと史上初のマイナス価格を記録した。ゼロを下回るマイナス価格は、原油を買う側ではなく、売る側が買う側にお金を払って買い取ってもらうことを意味する。
ここで用いられる原油価格とはWTI原油先物という原油の先物価格だ。先物価格とは将来の決められた日にあらかじめ売買することを約束する先物取引で用いられる価格で、実際には将来の約束の日が来た時点で現物の取引を行う。
この話が日本人とって全く関係ない話というわけではない。
CLO
かつてゴールドラッシュのようにシェールオイル採掘にこぞって参入した企業の中には海のものとも山のものともつかない未知の会社も少なからず含まれていた。
そのような信用力の低い企業が開発資金を調達しようとしても一般的な企業融資は受けにくい。そこで社債を発行して債権市場から資金を調達する手段もあるが、信用力の低い企業は格付けが低いどころか、格付けを得られないところもある。低格付けの企業が社債を発行するために金利を高くしないと買ってもらえないということでシェール企業のハイイールド債(低格付け債)が発行されていった。
さらに会社が万が一の場合に陥った時に、社債よりも優先的に出資した資金を返済するとい条件をつけたレバレッジドローンという金融商品も登場した。
レバレッジドローンでも束ねることでリスクが分散され、低い信用力でも投資家に買ってもらえるように利回りを高く設定すればいいという発想で生まれたのが、CLO(ローン担保証券)である。
もちろん、いくら金利が高くても低格付けのものばかり束ねても売るに売れない。そこで高い格付けを持つレバレッジローンも組み合わせることで魅力的な金融商品に仕上げていった。
結果的にCLOに世界中から資金が流入した。
CLOの世界全体のの残高は2019年末時点で約82兆円に上り、そのうち日本の金融機関の保有残高は13.8兆円(2019年9月時点)を占めるほど買いまくっていた。
そんな商品に投資する金融機関は下記の通りである。
三菱UFJフィナンシャル・グループ:2兆3000億円
ゆうちょ銀行:1兆7000億円
リーマン・ショック
農林中央金庫はリーマン・ショックの発端となった、米国のサブプライムローンを組み入れたCDO(債務担保証券)も大量保有していた。リーマン・ショックによる世界的な金融危機によって、2009年3月期には2兆円を超える巨額損失を出して、赤字へと転落している。当時、水面下では金融庁が農林中央金庫に公的資金を注入して、一時国有化する案まで検討していたという。
まとめ
前回のCDOと今回のCLOは信用の低い債務を組み入れているという意味を見ても、非常に似通っている。
あの時と同じようにCLOを大量に抱えている金融機関はこの先どうなるのか??