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書籍『国会議員に読ませたい台湾のコロナ戦』 感想

 

概要

2019年末、中国で発生した新型コロナウイルスは当初、これほどの被害を国際社会に及ぼすとは考えられていなかった。

だが、1月に中国で爆発的な感染が発生すると、3月にはアメリカやイギリス、日本でも感染が拡大した。2020年1月26日のジョンズ・ホプキンズ大学システム科学工学センターのレポートでは中国を除く感染被害国として、台湾はタイに次いで世界第二の被害が出ると予測されていた。しかし、実際には見事な初動と水際対策、及び徹底した隔離政策で、緊急事態宣言も出さずに6月7日には56日間の域内新規感染者ゼロを達成して、国内の安全を確保している。

中国との経済的にも人的にも交流の多い台湾が、なぜ新型コロナウイルス流入と蔓延を防ぐことができたのか。

 

感染症は戦争

端的に言えば台湾の成功の本質は、感染症との戦いを防疫戦争とみなし、施策を作戦と位置付けたことにある。

日本では生物兵器攻撃は防衛省バイオテロ警察庁感染症は厚生省が担当するとのこと。これでは、的確な対応ができない。

台湾が粛々と迅速且つ厳格に新型コロナウイルス対応を進めてきた背景には、やはりこの臨戦態勢であること、細菌攻撃だという意識があったと考えて良いだろう。だからこそ躊躇なく強制力を伴う政策を実行できたのだ。

 

マスクマップ

スマホやパソコンで、全国6500店舗の健保特約薬局にあるマスクの在庫量が分かる仕組みである。

スマホなどの位置情報で、自分に近い薬局の在庫が一目でわかる。

唐鳳(とうほう)政務委員の大きな功績は、衛生福利部中央健康保険者、健保特約薬局、衛生所と国民がつながっているネットワークのデータの一部を民間に開放したことである。これにより多くのIT企業がマスクマップを開発できる環境ができたのである。

これができるのが台湾の行政能力の柔軟性である。

 

行政サービス満足度

蔡英文(さいえいぶん)総統が、自身らの正しいと思う施策を次々に打ち出せたのは、1月11日の総統選挙での勝利の勢いがあったことも一つの背景としてあるだろう。台湾の直接民主選挙の投票率は総統選挙・立法委員選挙そして地方選挙とも極めて高いのが特徴だ。過去7回の総統選挙の平均投票率は75.48%にも及ぶ。

中央の行政サービスの質は、総統選挙にも立法委員選挙にも地方選挙にも影響する。

実権を握っている政府、地方政府が提供する行政サービスの質と満足度がそのまま投票率に繋がるのだ。

台湾の政府関係者にこの素早いコロナ対応の秘密を聞くと、政府の打ち出す施策と行政サービスは、そのまま選挙に響くからと聞いてしまえばあまりにも当然の答えが返ってきた。台湾人にとって、行政サービスの質こそ、最大の投票指標なのだ。

 

情報をキャッチ

台湾がここまで見事に新型コロナウイルスの台湾への流入を防ぎ、国内での感染拡大を防ぐことができたのはひとえにWHOと中国を猛進していなかったからだ。

なぜ台湾はWHOの指針を鵜呑みにしなかったのか。それは、台湾自身がWHOから排除されているからであり、その排除に中国の力が及んでいること、そしてWHOと中国の蜜月関係にも疑いの目を向けているからだろう。だからこそ、初動から迅速かつ効果的な施策を打ち出すことができたのだと言える。

 

武漢在住台湾人

海外で非常事態が起こった場合、自国民を救出するのが、国民の安全を守る国家の義務であり、役割である。

今回、日本も武漢市封鎖後に現地へチャーター機を飛ばし、邦人を帰国させた。

一方、台湾の武漢からの自国民救出には、日本とは異なる困難が立ちはだかった。端的に言えば、中国と台湾は敵対しているため、中国政府はそう易々と台湾国民を救出させてはくれない。

台湾政府は武漢が封鎖された後の1月27日、武漢の台湾人の帰国保護を中国側に要請したが、1週間にわたって回答を保留、無視された。

台湾政府は、当然のことながらチャーター機を台湾から向かわせることを考えていた。しかし、中国側は台湾当局の申し出など聴く耳を持たなかった。

結局、第1便には中国東方航空機を使い、200名前後を帰国させることでまとまった。台湾側は、現地の武漢台商協会などの名簿から、高齢者や子供、妊婦、慢性疾患の持ち主などの244名のリストを提出した。

中国側の指定した中国東方航空機のチャーター機は2月3日に飛ぶことが決まったが、台湾側は誰が乗ってくるかは知らされない状態で待つしかなかった。

 

リスト問題

実は、帰国便に乗っていた多くが台湾政府の提出したリストにはない人たちであるという話があった。一部報道では、中国と関係の深い健康な台湾人経営者とその家族がリストに入っていたなどとも伝えられた。

しかし、台湾政府は帰国者全てが帰国に問題のない台湾人、もしくは居留権保有者であるとして、全員を平等に受け入れた。国内の分裂を避けた好判断である。

台湾では、ある意味では敵対している相手から人質を返してもらいに行くようなものである。外交交渉やチャーター機の輸送、帰国の受け入れがどれだけ緊張を強いるものだったか、想像を絶する。

 

 

台湾のWHO加盟問題

なぜ台湾はWHOに邪険に扱われるのか。

台湾はWHOだけでなく国連、国連の下部組織であるユネスコユニセフなどの国際機関にも参加できていない。WTOAPECには参加できても、国家としてではなくあくまでも中華台北という地域として参加という制約を受けている。

台湾が国際社会で許されている呼称はチャイニーズ・タイペイ

戦後1945年から始まった中国大陸での中華民国(国民党)と中国共産党との国内戦争に敗れた国民党は台湾に移り、国家運営を続けることになる。国内戦争で国民党を中国大陸から排除した中国共産党は1949年10月1日に毛沢東主席が中華人民共和国の建国を宣言する。

1971年国連総会に中華人民共和国政府の代表権回復、中華民国政府追放を提出。日本やアメリカなどが反対票を投じるが、可決されてしまう。これがいわゆるアルバニア決議である。以来、台湾は国際社会からは主権独立国家としては存在すら公に認められない存在になってしまった。そのためWHOに正式に加盟できないままである。

 

経済成長率

2020年第1四半期の台湾の経済成長率は1.54%であったことを発表。これは韓国の1.3%、シンガポールの−2.2%、香港の−8.9%などに比べ良い結果であった。

ちなみに日本の2020年第1四半期の経済成長率2次速報では前期比年率−2.2%と二期連続のマイナスとなった。すでに感染症よりも経済悪化が怖くなってきている。改めて初動の遅れが残念でならない。