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『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在 』 感想

 

 

概要

本書は、ウイグルの地で今何が起きているのか、昨今の国際社会で断片的に報じられている情報を整理し、理解してもらおうと書かれてたものである。

 

100万以上のウイグル人

強制的に収容されているウイグル人が実は100万人、あるいは200万人以上いるという報告が国際社会で明らかになりつつある。中国に暮らすウイグル人は約1100万人。つまり10人前後に1人の割合で、身体の自由を奪われているウイグル人がいる。

2018年8月にジュネーブで開かれている国連人種差別撤廃委員会では、最大200万人規模のムスリムが中国で強制収容施設が入られて再教育を受けていると報告された。

 

ラーゲリ

再教育施設は推計1300ヶ所以上。実態は、まさに現代のラーゲリである。ウイグル人から尊厳と信仰と伝統と文化を奪い、ウイグル人そのものを中国人に改造する非人道的施設である。

 

きっかけ

中国当局は、再教育施設はあくまで過激派宗教に染まった人々が正しい中国人の道に戻るように教育し、社会復帰を支援するための施設、と説明しているが嘘である。

再教育施設、正式には職業技能教育研修センター。新疆地元メディアでは脱過激化研修班、教育転化研修センターなどと呼ばれており、名称は一定してない。

新疆ウイグル自治区の党委員会及び政府が2014年以降、正式に施策として導入。習近平政権が2012年秋に誕生して2年目のことである。

きっかけは、2014年4月30日に新疆ウイグル自治区の主要鉄道駅、ウルムチ南駅で起きた爆破テロ事件だといわれている。この事件は、習近平国家主席となって初めて新疆ウイグル自治区を視察し、その最終日に現場のウルムチ南駅近くを訪れた直後に発生した。

実行犯がウイグル人であったことは事実らしく、習近平はこの時、ウイグル人への強い恐怖と憎しみを植え付けられたという。この体験がウイグル人に対しては徹底的な思想教育が必要という認識に至った。

 

陳全国

陳全国は習近平の3大悪代官の筆頭といわれ、泣く子に陳全国が来るよというと泣き止むというジョークがあるほどの残酷なイメージがある。

 

パスポート回収

ウイグル人たちがパスポートを回収され、原則当局が保管することになった。つまり、ウイグル人は当局の許可なしに外国にはいけないのである。

また、すでに外国にいるウイグル人、特に海外留学生の呼び戻しを行った。

全世界でおよそ8000人のウイグル人留学生が帰国させられた。帰国後の消息はほどんど不明である。再教育施設か、死亡させられている。

 

社会信用システム

陳全国はまず、新疆地域の全居民(ぜんきょみん)に対して社会信用システムのスコア制度実施を指示した。

社会信用システムは全社会の構成員を対象に、その信用記録および信用インフラネットワークを構築。信用を守ることを奨励し、信用を失った場合懲罰の対象となるメカニズムによって、全社会の信用・誠意の意識、信用水準を高めるとしている。

これを共産党体制による統治に利用している。

 

マイナス

ウルムチ市河北西路社区の住民の信用スコアによれば、基礎点100点からウイグル人であるというだけでマイナス10ポイント、パスポートを持っているだけでマイナス10ポイントとなっている。

 

 

全てが筒抜け

2017年頃からポルノや不健康なサイトから我が子や青少年を守るための公益アプリ反黄之盾・浄網衛士の無料ダウンロードサイトを公開している。

浄網衛士は、新疆の市民をテロや過激化に関わることから守ることが建前上の狙いである。

ダウンロードすると、ネット上のテロ絡みの情報、映像、サイトにアクセスできず、スマホ内のそうした情報も削除され、また自動的にスマートフォンのSIM情報、Wi-Fiのログイン情報、SNSなどスマートフォンの中の情報を公安当局のサーバーに転送するので、通信記録、交友関係、SNSでの私的発言など全てが当局にまる分かりである。

 

健康診断

新疆当局が12歳から65歳までの新疆住民を対象に無料健康診断を実施し、血液、DNA及び虹彩(こうさい)、指紋情報を採取しているという。こうした生体情報を個人情報とリンクされているといわれている。

 

私生活に入る

ウイグル人家庭に対する漢族公務員あるいは民間監視委員の突然の訪問、ホームステイは春節に限らず、頻繁に行われている。それはいかにも笑顔の多民族交流という風に中国メディアで報道されるが、実態は私生活と心の中まで土足で入り込み、信仰と誇りと自由を奪う残酷な精神的虐待である。

 

臓器ビジネス

ウイグル人が集中的に管理され、身柄を拘束されるのか。その理由の一つとして、彼らの臓器移植のドナー候補として狙われているのではないかという恐怖をもっている。

ウイグル人その他のムスリム民族の臓器はハラール・オーガンといって、豚肉を食べていない清き臓器という意味で、同じイスラム教徒のレシピエントのあいだで非常に高い需要がある。

 

日本へ

中国共産党ウイグル弾圧は、日本でも行われている。

日本には2000人前後のウイグル人、あるいはウイグル系日本人が暮らしている。筆者が東京近郊に暮らすウイグル人社会人、留学生たちにインタビューしたが、誰もが家族の誰かを再教育施設に収容されている。

 

 

親元から離される

再教育施設に入れられると同時に、その子供たちが親族の元から強制的に連れ去られ、福祉の名の下に公営孤児院に入所させられるケースが続出している。

中国当局の狙いは、ウイグル人の徹底した中国人化であるから、再教育施設で大人を中国化する一方、子供たちの統一教育を強化すれば、極めて短時間でウイグル人全体を中国人化できる、つまりウイグル人の価値観、伝統、文化を完全に消し去ることができると考えている。

ウイグル人の父親が再教育施設に収容され、妻と幼子が家に取り残されていると、漢族男性の公務員や党員がお世話係と称して家に上がり込み、いつの間にか父親の座に居座ってしまうケースもあるという。

 

育児制限

「両少一覧」によれば2010年まで建前上、新疆ウイグル自治区少数民族農牧民夫婦は原則3人まで産んで良い。条件が合えば4人まで産んで良いとなっている。

ウイグル人はもともとたくさん子供を産む伝統がある。かつては10人前後の兄弟姉妹がいるのが当たり前であった。多く妊娠してしまうと妊娠6ヶ月だろうが、漢族のやり方で厳格に強制堕胎を実施してしまう。

麻酔も使わないし、衛生的な医療施設が行われるものでもなかった。多くの女性がこうした強制堕胎で健康を損ない、時に命を失った。

 

トランプ政権

トランプ政権に入って、米国の対中政策が大きく転換してきたことに伴い、国際社会のウイグル問題に対する空気が大きく変わった。2018年7月26日、ペンス副大統領は中国政府は、数十万人、もしくは数百万人の規模でイスラム教徒のウイグル族を再教育施設という場所に収容している。信仰と文化的帰属意識を失われようとしているとワシントンで講演で訴えた。

国務省人権民主局のマイケル・コザックは1930年以降、このような状況は見たことがないとコメント。つまり、習近平政権下のウイグル人弾圧がナチス政権下のユダヤ人迫害に匹敵するということである。

 

下記書籍参照