概要
本書では会計学という記述言語を新たな武器として身につけてもらえるようにする。
世界では
世界では会計の原理原則は知っていて当たり前の常識である。会計とはお金の出入りや財産を記録するためのものである。
債権
債権とは資産である。
例えばAという会社の株を100万円で買う。これを買った時の金額で帳簿を付けるので帳簿価格という。ところが買った直後に株の価値が70万円にまで下がってしまった。
これを実質価格という。
帳簿価格>実質価格となると損をする。その債権はあなたに損をさせる不良のものである。
これが不良債権である。
厳密には、帳簿価格より一定以上実質価格が低い場合、不良債権という。
帳簿価格と実質価格の差は損になり得るので、その差額を不良債権額と呼ぶことが多い。
外国語を学ぶと同じ
会計の言葉は、財務状況を表現することに特化した記述言語である。財務書類を読めるようになるためには、その専用の言葉を勉強しないといけない。
そういう意味では、会計を知るのは外国語を学ぶのと同じである。
権力関係
お金の流れから権力関係も見えてくる。
この資本主義社会において、良くも悪くも金は権力の象徴である。平たくいえば、金を握っている人が一番強いということである。
BS
決算時にその企業がどのくらいの債務を持っており、どのくらいの資本を持っており、これらのお金でどんな資産を手に入れ、差し引き、どれくらいの資産があるかをまとめたものである。
P L
この一年間に、その企業がどれくらいの収益を得て、どれくらいのお金を必要経費などに使い、結果どれだけの利益を出たかをまとめたものである。
本当の顔
企業の財務書類は、まずBSから見ていくのが基本である。
額が大きい項目を見ると、その企業がどんな資産に多くの資金を注ぎ込み、多くの運用益を得ようとしているのかという、経営姿勢みたいなものが見えてくる。
そこから、その企業の本当の顔が浮かび上がってくる。
BSを見ると
お金の調達と運用を繰り返すことで、少しずつ資産を増やし、会社を発展させていくことが企業活動というものなのである。
BSには、そんなお金の入りと出、調達と運用のある時点での成果が記される。つまりBSを見れば、その企業が調達した資金で、どんな資産を得ているのかがわかる。
ストックとフロー
BSとPLの違いを筆者はストックとフローで説明する。ストックとは特定の時点の話である。
決算書のBSも決算時という特定の時点の負債、純資産、資産の状態を示しているからストックの話である。
決算という特定の時点で、それらはどうなっているのかをまとめたものということである。
対するフローとは、ある期間の話である。
PLは1年間のお金の出入りをまとめたものだから、PLはフローを示すものということになる。
1年間で、どれだけの収益がありそこからどれだけの費用が差し引かれ、結果どれだけの利益が上がったかを示すのが、PLである。
金融資産と金融負債
金融資産とは実物資産でないが、収益を生むものである。具体的には株を始めとした有価証券である。
金融負債とは利息を取られるものである。
貸付と出資
貸付とはお金を貸してあげることである。したがって銀行の融資や社債は、貸付である。
出資は事業のためにお金を出してあげて、相手に利益が出たら一定の見返りを受け取るというものである。株の配当がこれに当たるといえば、イメージできる。
有価証券報告書を見る
大株主の状況の項目が重要である。
ここから、誰が一番、お金を出資しているか、すなわち誰がこの会社に対して権力を握っているかが読み取れる。
財務書類で金と権力の関係がわかるといったのは、有価証券報告書に大株主が明記されているからである。
情報は人の手を介するほど歪むものである。アクセス可能なら、一次資料を当たった方が正確である。知らないうちに他人のバイアスに影響される心配もない。有価証券報告書は、物事を考える際にも非常に役立つ一次資料なのである。
新聞社
新聞社は日刊新聞紙法という法律によって、株式譲渡制限が設けられている。そのため、大手新聞社は非上場になっているが、例えば朝日新聞社は金融庁に有価証券報告書を提出している。
また新聞社に適用されている優遇措置も備わっている。
一つは小売店による値下げを禁止する再販制度である。街中で新聞が安売りされているのを見たことがない。どこでも新聞社が設定した定価で売られているから、値下げによる利益圧迫が生じないのである。
一つは軽減税率である。これは特定の商品については増税率を下げるというもので、新聞のその対象である。
さらに新聞社は国有地を安く払い下げてもらって、社屋を建てている。
親子関係
朝日新聞社はテレビ朝日ホールディングスの大株主でもあり、やはりテレビ朝日ホールディングスは朝日新聞社の退職者の天下り先になっている。
もし電波オークションが導入されたら、これらのテレビ局への天下りは難しくなる。なぜなら、国に払う電波使用料の高騰によって、放送事業費が一気に上がり、テレビ局はさらに効率的な経営を迫られている。
各テレビ局が支払っている電波利用料は、現在、地方局で数百万から数千万円、キー局で数億円である。
そこへ電波オークションが導入されたら、既存のテレビ局が支払うべき電波利用料は、今の10倍や100倍になってもおかしくない。
建設国債と特例国債
政府の場合は、税収ではまかないきれない支出を補うための建設国債と特例国債である。
インフラの整備や建設など建設に関わる費用を賄う分を建設国債、それ以外を特例国債と呼ぶ。一般的に赤字国債と呼ばれるのは、特例国債の方である。
国債にはもう一つ財投債と呼ばれるものである。財投債はBS上で資産に変わる公債である。
統合BS
政府と中央銀行のBSを連結したものを統合BSという。この統合BSで政府の財務状況を見るのは世界の常識である。
一般会計と特別会計
国の会計には一般会計と特別会計と呼ばれる。
一般会計は国家運営上の一般的な予算である。一方、特別会計とはある特定の目的のために別個に作ったお財布である。
特別会計の収入源は、税収、国債に加えて国民が支払う業務手数料である。例えば社会資本整備特別会計なら、私たちが払っている高速道路利用料金が収入源の一つになっている。