概要
概念を多く扱う学問としての政治学ではなく、実学として役立つ政治について解説している。
憲法
政治の原理原則は、すべて憲法に定められている。憲法とは国の最高法規である。
どんな法律にも優る、日本国民全員が絶対に守らなくてはいけないルールを定めたものが憲法である。
立憲民主制
日本は立憲民主制である。立憲とは憲法という最高法規の下で統治が行われるということ。民主とは呼んで字の如く民が主であるということである。
立憲制には憲法が絶対である。日本国憲法の前文にも主権が国民に存することを宣言にはっきり書かれている。
間接民主制
国会議員はルールを決める権限を国民から付託されているに過ぎない。
ルールは誰によって決められているのか。「民に権限を付託された国会議員によって決められている」=間接民主制である。
国会議員
国会議員を選んでいるのは、他ならぬ自分たち国民である。仮に、感じがいいだけの人が国会議員を務めているとしたら、それを選んだ人たちの眼力が弱かったということである。選んだ側に落ち度がある。
マスで考えれば、今の政治は国民の選択を反映している。いわゆる民度の現れである。
選挙
選挙とは、自分たちが生きる社会の行方を決める権限を誰に託すかを決める場である。自分たちの選択が権限者を決め、権限者が社会の方向性を決める。そう考えると、やはり投票という行動は非常に重い意味を持つ。
衆議院議員総選挙
小選挙区選挙と比例代表選挙が、同じ投票日に行われる。総選挙とは、衆議院議員の全員を選ぶために行われる選挙のことで、
①衆議院議員の任期満了(4年)によるもの
②衆議院の解散によって行われるもの
参議院議員通常選挙
参議院議員の半数を選ぶための選挙。
参議院に解散はないため、常に任期満了(6年)によるもののみ。
ただし、参議院議員は3年ごとに半数が入れ替わるよう憲法で定められているため、3年1回、定数の半分を選ぶことになる。
選挙制度
選挙の仕組みをことをまとめて選挙制度という。
候補者に投票する
大選挙区制:1つの選挙区から2人以上の議員を選ぶ。
小選挙区制:1つの選挙区から1人の議員を選ぶ。
中選挙区制:小選挙区と大選挙区の中間にあたり、1つの選挙区から2人から6人(標準的には3人から5人)を選ぶ。
政党に投票する
比例代表制:政党ごとの投票数に応じて、当選者を決める。
衆議院選挙では、小選挙区に立候補している候補者が比例代表にも立候補することができる(重複立候補)。重複立候補した候補者が小選挙区で当選すれば、そのまま当選となる。小選挙区で落選した場合は、今度は比例代表の順位で当選が決まる(復活当選)。
このように衆議院の選挙制度は小選挙区と比例代表の両方を同時に行うので、小選挙区比例代表並立制と呼ばれる。
参政権を放棄する
参政権を放棄するということは、国の行方を決める権限を誰かに付託する権利を放棄するということである。
つまり、私はどのようなルールを作られても文句を言いませんと宣言できるというのなら、投票に行かなければいい。
多数決
万人が納得できるルールを作ることなど、まず不可能である。権限を付託する身としては、そのことをよく肝に銘じておかねばならない。
万人にとっての正解などないなかで、100点を出すことは不可能である。
民主主義の国では、政治の原理原則は多数決である。つまり、半数以上の不満が出なければいい。
デュベルジェの法則
デュベルジェの法則と呼ばれる法則がある。
選挙の候補者は、その選挙区で選出される人数+1人になる、これだけである。
例えば、ある地域で2人を選出するならば候補者は3人、3人を選出するならば候補者は4人に集約される、ということである。
選出者数が3人だろうと10人だろうと100人だろうと、その地区での選出数+1人の候補者になる傾向がある。
何人も候補者が立って何人も落選するのではなく、誰か1人だけが落選するというミニマムの候補者数に絞られる、といってもいい。
つまり選挙制度には、当選する候補者を、ひいては国政を大きく左右する力をも有するというのが、デュベルジェの法則のいわんとするところである。
二大政党制
各選挙区を1人選出とすれば1人選出+1で2人の候補者が各選挙区で出馬することになり、結果的に二大政党制になる。
その好例は米大統領選挙である。大統領選では、結局、共和党から1人、民主党から1人が立つ。
日本が二大政党制にならない最大の理由がある。
小選挙区制では、各選挙区から1人が選出される。もし小選挙区制だけだったら、1人選出+1=2人の候補者という二大政党制の条件が満たされる。自ずと政党も2つに集約され、有権者の選択肢は2つに1つである。
政党支持票は、11の比例代表ブロックごとに集計され、あらかじめ政党内で決められている名簿中、順位が高い順に当選者が決まる。
比例代表制には選挙区の区切りがない。つまり1人選出+1=2人の候補者という法則が成り立たない。ここでは複数の政党が政党支持票を取り合い、議席を争う。有権者の選択肢は2つに1つではなく、3つ以上から1つである。
比例代表制という選挙制度がある限り、選挙で戦う政党が2つに絞られない。小選挙区制だけにすると決めてしまえば、今ある複数の小政党は、より主張の近い大政党に合併吸収され、自然に二大政党制になっていく。
最高裁判所裁判官国民審査
最高裁判所裁判官国民審査とは、憲法に定められた制度である。
最高裁判所の裁判官を国民が審査するというものである。国民は罷免すべき裁判官と、引き続き在職すべき裁判官を指名できる。
司法を監視するという国民の義務であり権利である。それを行使しないのは、憲法で保障された権利を放棄するということである。
国会
立法:国会
行政:内閣
司法:裁判所
国会は、「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」(日本国憲法第41条)と規定されている。
憲法は国の最高法規であり、国会では、憲法に記されていないことは行われない。
重要なのは、国会とは、この国で唯一の立法機関であるという点である。
解散総選挙
衆議院が任期満了となったときに解散総選挙となる。衆議院議員の任期は4年と定められている。
内閣総理大臣は、国会議員から選ばれることになっているため、内閣総理大臣の任期も4年でいったん切れることになる。
衆議院が任期満了となる前に解散総選挙になる場合もある。衆議院で内閣不信任案が可決されたときである。
内閣不信任案が可決されたら(あるいは信任案が否決されたら)内閣総辞職しなくてはいけない。
内閣総理大臣は、衆議院を解散しようと決めたら、この度衆議院を解散したいので、みなさんにも賛成してほしいと閣議にかける。ただし、10日以内に衆議院が解散されない限りという条件つきである。
そこで全閣僚の合意を得なくては衆議院を解散できないのだが、内閣総理大臣は、自分だけの判断で閣僚をクビにすることができる。これも憲法で定められていることだ(第68条)。
国会
日本の国会は会期と呼ばれる、一定期間にのみ活動を行う会期制を採用しており、会期は国会の召集により始まる。
常会(通常国会)
特別会(特別国会)
臨時会(臨時国会)
本会議はどちらかというと、議会に特化した場であり、国会による細かい審議は、その前の委員会を中心に進められている。
本案を最終的に本会議に上げるかどうかを決めるのは委員会のため、法律の制定において委員会が持つ力は大きい。
立法
国会議員の仕事の1つは立法、法律を作ることである。
立法には、議員文法と閣法の2種類がある。
議員文法の法案は、委員会での審議、承認を経て改めて衆議院本会議に提出され、そこでも審議された末に可否が決まるというプロセスである。
国会議員としてではなく、行政府である内閣の総意として、つまり政府から衆議院に法案を提出しますよ、ということだ。これを閣法と呼ぶ。
閣法
閣法とは、総理大臣の肝入りの法案といえる。
政権与党の公約のうち、どの公約に関わる法律を優先して閣法にするか、これは、たいてい内閣総理大臣が政府トップとして何を重視するかによる。
予算を審議
立法することに加えて、もう一つ予算を審議することも国会議員の仕事である。
立法も予算審議も出口は行政である。
ある政策を行うには法律とカネが必要だから、それを国会で話し合おうということである。
「国会で決められた法律を実際に適用し、国会で通った予算を実際に使って政策を行う側=行政機能」をチェックするのも、国会の重要な機能という。
国会の主な仕事
国会の主な仕事は以下の8つである。
法律の制定・改廃
予算の議決
条約締結の承認
内閣総理大臣の指名
憲法改正の発議
弾劾裁判所の設置
国政調査権の発動
憲法改正
国の最高法規であるからこそ、憲法も、時代の変化に応じて変化してしかるべきなのである。
憲法の改正には「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」とされている。
しかも、2007年までは、肝心の具体的な手続きが規定されていなかった。
内閣総理大臣
内閣総理大臣は、衆議院の過半数の議席をもつ政権与党の党首が務める。
内閣総理大臣は、必ず国会議員であることが憲法に定められている。
内閣総理大臣が任命する大臣は、民間人でもいいのだが、半分以上は国会議員から選ばなくてはいけない。
青木の法則
「内閣支持率+与党第一党の政党支持率(青木率)が50切ると政権が倒れる」というものである。
かつて自民党参議院幹事長を務め参院ドンとも呼ばれた青木氏が、しばしば経験則として話していたことだ。
支持率と獲得議席数には正の相関がある。
青木率が高ければ高いほど、獲得議席数も多くなると予測できるという、極めてシンプルな話である。
補完性原理
ニア・イズ・ベターという原則がある。
国民の身の回りのことは、国民に身近な行政機関、つまり地方自治体が行ったほうがいいということだ。
市民に身近な地方自治体のほうが、市民のニーズを的確に把握して、行き届いた行政サービスを提供できるからである。
国のことは国、地方のことは地方で行うというように、役割を補完する。ニア・イズ・ベターを原則とする地方分権の考え方は補完性原理に基づいている。
足による投票
分権化定理とは、国よりも地方自治体の方が、住民の生活実態やニーズなどの情報を把握しやすいため、地方自治体に自治権をもたせ、その責任で行政サービスを提供させたほうが、国全体として、より高い行政が叶うというものである。
自治権として与えられた権限を市民のために使わない地方自治体が出てこないとも限らない。そこで、よく足による投票である。
より自分にとって好ましい行政がある地域を、住む場所として選ぶというのが足による投票である。
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