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『プーチン幻想「ロシアの正体」と日本の危機』 感想

 

本書でウクライナ人として持っている知識や自然の感覚から、日本人のロシア幻想、プーチン幻想を解きたいとのこと。

 

プーチン

プーチンソ連国家保安委員会(K G B)の出身である。

国家保安を担当する組織は、他の各省庁などと比べて特別扱いをされており、独自の人事体制を持っていた。その名前や形式は時代とともに変わっており、ソ連初期のチェーカー、スターリン抑圧時代の内務人民委員部、ソ連後期のK G B、ロシア連邦時代のF S Bといった名称である。

2000年の大統領選挙において、ロシア共産党の勝利は現実的となっており、それを恐れたのが、エリツィン体制を支えていたオリガルヒである。

エリツィン自身も1991年にソ連共産党から権力を奪い取ったことから、共産党が再び政権を取れば、ただでは済まなかっただろう。だからエリツィン側近やオリガルヒは、彼らの安全や財産を保証し、操りやすい後継者を探り出した。

オリガルヒの各財閥は、保安系出身者と近い関係にあった。エリツィンに近いロマン・アブラモヴィッチボリス・ベレゾフスキーは現役F S B長官のウラジーミル・プーチンを推していたが、他のオリガルヒはそれぞれに近いF S B関係者を推していた。

結局、人事権は大統領のエリツィンにあったので、F S B長官のプーチン大佐が首相に任命され、事実上の後継者指名を受けた。

 

テレビ局強奪

1999年12月31日には、エリツィンが大統領を辞任することを表明し、プーチン大統領代行兼首相となった。さらに2000年3月26日、1回目の投票で51.95%の票を獲得し、プーチンが正式にロシア大統領となった。

当選後、プーチンは真っ先に言論統制を開始した。最も有名だったのは、プーチンに対抗するオリガルヒのグシンスキーが所有する大手テレビ局N T Vの強奪だった。

また、それまでロシア連邦各州の州知事は選挙によって選ばれたが、プーチンは制度を変えて、州知事を大統領が直接、任命できるようにした。

 

謀略機関の所有する国家

ロシアは国家謀略機関を所有しているのではなく、謀略機関の所有する国家なのである。全体主義体制を維持するために監視や恐怖をもたらす道具が主体性を持ち、国家そのものを自分の道具にしたのである。

 

東方拡大

プーチンにとっては、N A T Oの東方拡大は裏切り行為である。

例えば2004年に、N A T Oに新たな七カ国が加盟した。バルト三国スロバキアルーマニアブルガリアスロベニアである。その時、プーチンは七カ国の加盟をアメリカのブッシュ大統領とイギリスのブレア首相による自分に対する裏切り行為だとう認識した。つまりプーチンはN A T Oは東へ拡大しないと約束している。と勝手に思い込んでいる。

この認識は間違っている。

そもそもN A T Oは東へ拡大しないという約束は存在しない。

 

対等の関係

プーチンが考える対等な関係とは、西洋はロシアに対して配慮し、ロシアの国益を損なってはいけないが、ロシアは西洋においていかなる謀略をやって良い。ロシアに対して西洋諸国は大人しく、無抵抗でいるべきだということだ。

 

難民

ロシアは2016年のイギリスのE U離脱国民投票アメリカ大統領選挙にも介入していたことがC I Aの捜査の結果、明らかになっている。

さらにヨーロッパにおける難民危機もロシアに責任の一端がある。2015年からロシアはシリア内戦に参戦している。そしてシリアを空爆する際、ロシア空軍はわざと住宅地を空爆し、多くの人々の生活環境を破壊した。結果、多くのシリア人は難民となり、ヨーロッパへ行くことになった。

ヨーロッパに難民が増えることは、プーチンにとって直接の利益である。難民が増えればその分、ヨーロッパ諸国が対応に追われて混乱する。

 

暗殺未遂

2018年にはイギリス国内で暗殺を実行しようとした。ターゲットは、イギリスの元スパイであるセルゲイ・スクリパリであった。

2018年3月4日に、彼と娘のユリヤが意識不明の状態でベンチで発見された。二人は病院に運ばれ、神経ガスに毒されていることが判明した。神経ガスの種類はノビチョクといって、ソ連によって開発された殺傷用化学兵器である。ロシアの疑いは濃厚となった。

結局、暗殺は未遂で終わった。

他国の領内に軍事用の毒ガスを撒くことは戦争行為である。ロシアという国は、平気で主権侵害を犯す。

 

優遇

ヨーロッパ諸国のロシア優遇ぶりは酷かった。

とりわけドイツのシュレーダー首相はドイツ連邦首相を退任したのち、ガスプロムの子会社で役職を得て、現在に至るまでロシア政府から高額の給料をもらっている。

 

ジョージア

2008年8月7日、ロシアは再びジョージアに侵攻し、第二次ロシア・ジョージア戦争が起きた。

ロシアはジョージア国内の都市を空爆しており、戦争の結果、ジョージア領土の占領地域を拡大した。

にもかかわらず、西洋諸国は今回のロシアの暴挙を許した。

 

オバマ大統領

当時、アメリカはチェコポーランドのニ国に、ロシアの大陸間弾道ミサイルを撃墜可能な防空システムを設置する計画があった。オバマ大統領はロシアの猛反発を浴びると、プーチンに配慮して計画を中止した。つまりオバマは自国の防衛政策すら、ロシアの謀略と気まぐれに委ねた。

 

テレビ

テレビのコントロールは、プーチン体制の基盤の一つである。政権に都合のいい情報しか報道しないメディアは、一般人の意識を支配してプーチンの高い支持率を支えている。

結果として長年、ロシアのテレビは国民を洗脳し続けている。

プーチン体制のプロパガンダの基本は、いくつかのメッセージから成り立っている。

ロシアはアメリカに匹敵する偉大な国だ、ロシア人は選ばれた民族だ、モスクワは第三のローマなどである。

ロシアのテレビ番組は常に、外国に対する憎悪を受け付ける。

 

インターネット空間

ロシアでは現在でも、インターネットよりテレビから情報を得る人が多い。とはいえ、ロシアにおいてはインターネット空間も徹底的にコントロールされている。ロシアデジタル発展・通信・マスコミ省には、インターネットを管理する部局がある。

この部局は、ウェブサイトやブログ、S N Sのページなどをブロックできる。つまり、管理局の担当者がインターネットサービスを提供する事業者に、特定のサイトをブロックするように要請すれば、事業者それに従うことは法的義務である。

 

軍事同盟

ロシアは中国に最新の武器を大量に輸出するだけではなく、軍事技術や宇宙に関わる技術もすべて提供している。つまり、中国が自力で同じような武器を製造できるように。また、中国軍とロシア軍は合同軍事演習を毎年行っている。

2015年9月3日に北京で行われた戦勝記念パレードに、プーチンが参加している。

中露には正式な安全保障条約こそないが、関係の親密さで言えば完全な同盟国である。

 

べた褒め

ロシアのテレビは中国や中露関係については、中国そのものについての報道だが、ほぼ完璧なべた褒めである。

 

人を殺してもよい

プーチン本人や彼の出身組織であるK G Bにおいては最初から人を殺してもよいという考え方が普通である。殺人は最後の手段ではない。

欧米において法の支配は一応機能している。それに対して、プーチンがロシアに築き上げたK G B体制においては、最初から権力者の都合や意思は法律に優るのである。

 

反日

歴史の解釈という点においては、ロシアに反日教育はちゃんとある。

ロシアの反日教育は規模こそ中国や韓国と比べて小さいが、反日歴史認識自体は現実に学校で教えられている。ここが重要な点だが、ロシアはあらかじめ反日の種が蒔いてあるということである。

 

歴史認識

ロシア人の多くはシベリア抑留のことをそもそも知らないし、知っている人のほとんど罪の意識がない。一切の賠償責任も問われていない。プーチン政権になってからは謝罪すらない。

日中戦争も日米戦争も日本が進んで起こした戦争ではなく、ソ連が率いるコミンテルン謀略によって起きたものである、という事実も表に出ていない。

ロシアの歴史認識とは、どんなに酷いことをやってのそれを正当化する、という原則に基づいている。

ロシア人は平気でロシアは歴史上、他国を侵略したことがないと言っている。ロシア人の解釈では、ロシアが現在持っている領土と、かつて持っていた領土はすべて、現地人の希望でロシアへ編入されたことになっている。

 

勝利

ロシア人に何を誇れるかと聞いたら、十中八九、大祖国戦争での勝利と答える。ソ連が戦った第二次世界大戦の部分を大祖国戦争と呼ぶのであるが、ロシア人の大祖国戦争史観は歴史認識の基礎である。

ソ連時代には、大祖国戦争の勝利を記念するパレードは戦後4回しか行っていない。しかしソ連崩壊後、ロシアでは1995年以降、勝利を記念するパレードが毎年行われている。

 

占領状態

ロシアによって不法占領されている北方四島の問題である。これは領土帰属ではなく不法占領の問題である。つまり、北方四島は係争地ではなく、日本領土なのである。これらの領土をロシアが勝手に占領していることのみである。

それと千島列島と南樺太の帰属問題である。国際法上、これらの領土は日露間の係争地である。サンフランシスコ講和条約によれば、日本は南樺太と千島列島を放棄したが、その帰属は明記されていない。現在、ロシアは南樺太と千島列島を勝手に実効支配しているが、その法的根拠はない。だから、かつて南樺太と千島列島を所有していた日本とそれを現在、実効支配しているロシアは国際法上、同等の権利を持つ。つまり、どの国にも帰属していないこの領土は日露の係争地ということである。

日本人の集落は樺太において17世紀から存在する。その頃、ロシアはまだシベリアの征服中であり、樺太どころか、現在でいう沿海州ハバロフスク州にすら進出していない。ロシア人が北樺太に旗を掲げて領有宣言したのは、1853年である。その時点ではすでに250年間も樺太で暮らす日本人の集落があった。ロシア人が入り込むようになったのはその後である。

それにその後の1875年に、ロシアは武力を背景に、日本に樺太・千島交換条約を押しつけた。これは交換条約ではなく、ロシアが千島列島に対する領有の主張を諦める代わりに、日本がロシアに樺太を割譲することを定める条約である。

その30年後、ロシア帝国の拡張主義の結果、勃発した日露戦争に勝利することによって、日本は1875年に脅しで割譲されられた樺太の南半分を取り返した。

終戦間際から終戦直後にかけて、日ソ中立条約は有効だったにもかかわらず、ソ連は日本に対して騙し討ちの侵略戦争を実行した。1945年8月9日から9月5日までの間に、ソ連は日本領土であった樺太庁と千島列島を占領し、独立国であった満州国を破壊し、満州において日本人20万人を虐殺し、合わせて60万人を抑留した。

 

国力を高める

日本は今から領土を取り返すための準備を地道に行わなければならない。

一つ目は、日本の国力全体を高める政策である。具体的には防衛予算増加と再軍備、経済復活と活性化、技術的な発展、そして人口維持のための少子化対策である。

二つ目は、北方領土返還に特化した準備である。日本国民の間に北方領土返還の必要性を積極的に広めること、そして人材的・インフラ的な準備である。

 

新中

プーチンはロシアの歴史上、最も親中の指導者である。プーチン支配の19年間で、ロシアの対中依存度は高まる一方である。

プーチンの政策の結果、膨大な数の中国人がロシアに移住し、中国企業はロシアの土地を大量に租借している。

中国の頼み事にプーチンは常に無条件に応じており、中露の親密な軍事同盟は実体としてすでに出来上がった事実である。

 

常任理事国

ソ連崩壊後、国際連合安全保障理事会において、ソ連が持つ拒否権のある常任理事国の席をロシアが受け継いだ。国連憲章では、常任理事国ソビエト社会主義共和国連邦と書いてあるにもかかわらず、何の議論のなく、その席をロシアが受け継いだのである、ところが、これらをアメリカは容認した。

法的には、国家の消滅とともに常任理事席も消滅するという解釈も可能なのに、その可能性を一切議論せずに、ロシアの自動的な常任理事国入りが容認されたのである。

 

世界第三位

ソ連崩壊の時点でウクライナソ連から大きな核戦力を受け継いだ。当時、ウクライナは世界第三位の核戦力を持っていた。

独立後、ウクライナの権力者は主権宣言に組み込まれた非核三原則のとおり、早期かつ完全な核兵器の放棄という方針を取った。また米露からウクライナに対し、核兵器を放棄するように非常に強い圧力がかかった。

実際の核兵器の放棄は、独立して間もない頃から始まった。

1992年のうち戦術核兵器はほぼすべてロシアに輸送され、ウクライナから消えてなくなった。戦略核兵器の放棄はもう少し長い時間かかった。

1993年9月3日、ウクライナ南部のクリミア半島ヤルタ市郊外の町マッサンドラで調印したマッサンドラ合意によって、ウクライナにあるすべての大陸間弾道ミサイル、核弾頭、高濃縮ウラン、兵器級プルトニウムをロシアに移動することが決定した。

1996年2月に最後の核弾頭がロシアへ輸送された時点でウクライナは核保有国の地位を失い、正式に非核国となった。

 

ブダペスト覚書

安全を保障する合意に見えるが、実質は何も保障されてない代物の名称はブダペスト合意、正式名称は核不拡散条約の加盟に際し、ウクライナの安全保障に関する覚書である。1994年12月5日にハンガリーの首都ブダペストで、アメリカのクリントン大統領、イギリスのメージャー首相、ロシアのエリツィン大統領、ウクライナのクチマ大統領によって署名された。ただの覚書であり、最初から何の法的拘束力もない。つまり、ブダペスト覚書の条項を破っても国際法違反にはならない。

例えば内容の一部に、

英米は、ウクライナが侵略被害者となった場合、もしくは侵略威嚇を受けた場合、国連安全保障理事会に対し、至急、ウクライナを支援する行動を起こすことを要求する義務を確認する。

この程度の文章が、世界第三位の核戦力が放棄された代償である。

 

クリミア侵略

2014年、ロシアが現実にウクライナを侵略した。ロシア軍はウクライナ南部のクリミア半島と、東部のドネツィク州、ルハーンシク州の一部を占領し、現在で戦闘が続いている。

英米は最初からウクライナを守る義務がなく、覚書に書いてあるとおり、ウクライナがロシアから侵略を受けたときに、英米は国連安全保障理事会においてウクライナを支援する要求をした。すなわち、安保理において拒否権を持つロシアの存在がウクライナ支援を不可能にする、というのはまた別の話である。

ウクライナが置かれた状況は、大きな教訓となっている。

一つ目は、一時的におとなしくなった侵略国家が、再び凶暴になる可能性が十分あるので警戒しなければならない。

二つ目は、国際社会においては、どの国も過去に自国が取った行動には責任を持ちたがらず、責任を放棄しようと考える。

三つ目は、したがって自国の安全を保障するための交渉において、少なくとも当該国全てが守る義務のある条約の締結を要求しなければならない。

四つ目は、友好国は必ずしも自国のために動くとは限らない。

 

下記書籍参照